審査員紹介

最終審査員

本アウォードが目指すべき方向性として、現代美術の、さらには文化芸術の歴史の中でコンテクストを生成し、 豊富な知識と国際的な視点、独自性と先進性のある思考と感性を持ち、新しい表現や論考を切り拓いてきた5名を最終審査員としてお迎えします。

※ 敬称略・五十音順

金島 隆弘

金沢美術工芸大学 芸術学SCAPe 准教授

金島 隆弘

1977年東京生まれ。東アジアの現代美術や工芸を含む文化的エコシステムにおける協働、プロデュース、キュレーションの実践的研究を行う。横浜、北京、台北、成都、京都など、東アジア地域でのアートプロジェクトや展覧会、交流事業、調査研究などを手がけた他、「アートフェア東京」エグゼクティブディレクター(2011-2015)、「アート北京」アートディレクター(2016-2017)、「アートコラボレーションキョウト」プログラムディレクター(2021)を歴任。沖縄北部地域で開催される芸術祭「やんばるアートフェスティバル」のエキシビション・ディレクターを2017年より毎年務める。
2002年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程、2023年京都市立芸術大学大学院美術研究科芸術学博士後期課程修了。修士(政策・メディア)・博士(美術)。

応募者に望むこと

ユニークな審査体制が特徴のTERRADA ART AWARDが継続して開催されることをとても嬉しく思います。今までの受賞作家とその作品を振り返ると、作品から強い作家性を感じられることはもちろん、自身のキャリアの飛躍に繋がった作品、今まで温めてきたけど諸条件で制作できなかった作品を展開する機会として、TERRADA ART AWARDがあったように思います。この絶好の機会を活かし、変化する今日の社会や価値観と対峙しながら、自身が表現したい原動力を作品として展開し、このTERRADA ART AWARDに是非チャレンジしてもらいたいと思います。

神谷 幸江

美術評論家、キュレーター

神谷 幸江

ジャパン・ソサエティー(ニューヨーク)ギャラリー・ディレクター、広島市現代美術館学芸担当課長、ニューミュージアム(ニューヨーク)アソシエイト・キュレーターを歴任。第12回上海ビエンナーレ(2018-19)共同キュレーターを務める。国内外でアジア地域、分野を横断する展覧会を企画。西洋美術振興財団学術賞(2011)受賞。AICA(美術評論家連盟)会員。『Creamier –Contemporary Art inCulture』(Phaidon、2010)をはじめ著作多数。国立アートリサーチセンター専門委員、Shigeko Kubotaビデオアート財団(SKVAF)アドバイザー。

応募者に望むこと

私たちの生きる世界に対し問いかけるための手段として、美術表現は様々な試みを行ってきました。そうして境界や壁を超えたはずが、新たな分断や反目によって、今また多くの亀裂や不均衡を生み出しています。閉鎖的になりゆく世界を、新たな視点でどう広げ繋げていくか。本アウォードはより大きな世界へ臨もうとする新しい才能を、力一杯サポートする機会です。美術を通じた挑戦をぜひ見せてください。

寺瀬 由紀

アートインテリジェンスグローバル ファウンディング・パートナー

寺瀬 由紀

2011年にサザビーズでアートのキャリアをスタートし、2018年から2021年まで現代美術アジア部門の統括責任者を務める。在任中、香港で年2回開催されるコンテンポラリーアート・オークションを1億ドルを超えるイベントへと牽引し、7期連続でアジア圏におけるマーケット・リーダーとしての地位を確立した。アジアの主要な現代アーティストの作品を記録的な売上げに導いたほか、アジアにおける西洋美術の新たな基準を確立し、その結果として多くの優れた作品が著名なコレクションに収蔵されている。2021年にサザビーズを退社し、同じくサザビーズ出身のエイミー・カペラッツォとともに国際的なアートアドバイザリー会社アート・インテリジェンス・グローバル(以下、AIG)を設立。香港とニューヨークに本社を置くAIGは、個人売買や取引、包括的なアドバイザリーサービス、アーティストやファミリーオフィス、信託・相続に関する専門的なサポートを含めて、幅広いサービスを提供している。M+ Museum(香港)の創設パトロンであり、Para Site(香港)の理事を務めている。

応募者に望むこと

TERRADA ART AWARDも、若手作家に向けて開催される公募展としては、既に国内でも有数のアウォ―ドになってきていると感じています。実力ある過去の受賞者たちの、日本に留まらない活躍にも勇気づけられます。
色々な意味で、キャリアのターニングポイントになりうる場だと思います。あなたにしか紡げないナラティブで、あなたにしか作れない作品を、お待ちしています。

真鍋 大度

アーティスト、プログラマ、コンポーザ

真鍋 大度

東京理科大学理学部数学科、国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)卒業。2006年株式会社ライゾマティクス設立。2015年よりRhizomatiksの中でもR&D的要素の強いプロジェクトを行うRhizomatiks Researchを石橋素と共同主宰。2018年には日本国内では初となる個展を鹿児島県霧島アートの森で開催。
Ars Electronica Distinction Award, Cannes Lions International Festival of Creativity Titanium Grand Prix, D&AD Black Pencil, メディア芸術祭大賞など国内外で受賞多数。
これまで東京藝術大学美術学部先端芸術表現科、東京藝術大学美術学部デザイン科、東京工芸大学メディアアート学科にて非常勤講師を、また東京藝術大学社会連携センター 伊東順二特任教授開講講義「社会基盤としての芸術」にてゲスト講師、ブレーメン芸術大学では特任教授、慶應義塾大学環境情報学部では特別招聘教授を、現在公益財団法人アイスタイル芸術スポーツ振興財団では評議員を務めている。

応募者に望むこと

複製の時代から生成の時代へと移行し、かつての想像が現実となる中、アートの役割が拡大しています。この時代背景を踏まえ、近未来を予見するような作品の登場を期待しています。社会や文化の未来像を提示する作品に出会えることを楽しみにしています。応募者の皆様の創造性と革新性に期待しております。

鷲田 めるろ

十和田市現代美術館 館長、東京藝術大学 准教授

鷲田 めるろ

1973年京都市生まれ。東京大学大学院修士(文学)修了。金沢21世紀美術館キュレーター(1999年から2018年)を経て現職。第57回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館キュレーター(2017年)。あいちトリエンナーレ2019キュレーター。
主な企画に「妹島和世+西沢立衛/SANAA」(2005年)、「アトリエ・ワン いきいきプロジェクトin金沢」(2007年)、「金沢アートプラットホーム2008」、「イェッペ・ハイン 360°」(2011年)、「島袋道浩:能登」(2013–2014年)、「坂野充学 可視化する呼吸」(以上金沢21世紀美術館、2016年)、「越後正志 抜け穴」(ギャラリー無量、2017年)、「Identity」(nca | nichido contemporary art、2019年)、「インター+プレイ」(十和田市現代美術館、2020年、金澤韻との共同企画)など。著書に『キュレーターズノート二〇〇七ー二〇二〇』(美学出版、2020年)。

応募者に望むこと

アーティストである以前に、人としての生き方の重力がのしかかっている作品を見たいです。理解できないけれど、それ以外にはありえないことだけは確信できる作品。

一次審査員

一次審査員は、最終審査に進む候補者を選出していただきます。特にエマージングアーティストについての見識の深い方々をお迎えしました。

※ 敬称略・五十音順

池城 良

アーティスト、ミュージシャン、研究者、香港城市大学クリエイティブメディア学院 助教

池城 良

キングス・カレッジ・ロンドン音楽部卒業後、ケンブリッジ大学大学院音楽部修士課程、ロンドン大学ゴールドスミス音楽部コンピューティング学部博士課程修了。現在、香港城市大学クリエイティブメディア学部の助教授を務める。
香港のM+美術館や韓国の光州のアジア文化センターに出展、ドイツ、オーストリア、スイス、フィンランドの国営テレビでテレテキスト(文字多重放送)・アート作品が放映。ZKM KarlsruheとMIT出版の『Sound Art: Sound as a medium of art』にも寄稿。音の意義やコンテキストを提供する可能性、及び、デジタルやテクノロジーとの関連を通じての物質性に関心を持ち、作品には、オーディオ、ビデオ、インタラクティビティー等を駆使したインスタレーションやライブパフォーマンスを含む。

応募者に望むこと

二年前の応募者へのメッセージで、私たちは不確実性、紛争、気候非常事態等の未曾有の時代に生きていると述べました。どうやらその状況は続いており、さらに悪化しているように思えます。したがって、私たちは自分自身を問い続けています。存在として、そして芸術や文化に携わる者として、私たちを形作るものは何でしょうか?ほぼ全てのことを生成できるAIがますます普及している一方で、多くの問題を解決しないとき、私たちは実際に何ができ、何を表現できるのでしょうか?応募者の幅広いポートフォリオを見るのを楽しみにしています。

大巻 伸嗣

美術作家

大巻 伸嗣

「存在」とは何かをテーマに制作活動を展開する。環境や他者といった外界と、記憶や意識などの内界、その境界である身体の関係性を探り、三者の間で揺れ動く、曖昧で捉えどころのない「存在」に迫るための身体的時空間の創出を試みる。
主な個展に、「Interface of Being 真空のゆらぎ」(国立新美術館、2023)「大巻伸嗣―地平線のゆくえ」(弘前れんが倉庫美術館、2023)、「大巻伸嗣The Depth of Light」(中国A4、2023) 「存在のざわめき」(関渡美術館、2020) 等。越後妻有大地の芸術祭、横浜トリエンナーレ等の国際展にも多数参加。近年は、「Rain」(DaBYダンスプロジェクト)、横浜ダンスコレクション「Futuristic Space」(横浜赤レンガ倉庫、2019)、「Louis Vuitton 2016-17 FW PARIS MEN'S COLLECTION」(アンドレシトロエン公園/パリ、2016)などパフォーマンス作品も多く展開する。
現在、「Lines—意識を流れに合わせる」(金沢21世紀美術館、2024)に参加。

応募者に望むこと

前回に続き、一次審査を担当させていただくことになりました。
自分の背景をしっかりと作品と重ね合わせられているか、独自性があるか、作品を作り続けられる将来性を感じるものであるかなど、審査のポイントはたくさんあります。
実際に作品を見たいと感じさせる作品に出会えることを期待しています。

木村 絵理子

弘前れんが倉庫美術館 館長

木村 絵理子

キュレーター、2023年より弘前れんが倉庫美術館副館長を務め、2024年より現職。多摩美術大学・金沢美術工芸大学客員教授、美術評論家連盟会員。2000年より横浜美術館に勤務、2012年より2023年まで主任学芸員。2005-23年まで横浜トリエンナーレのキュレトリアル・チームに携わり、2020年の第7回展では企画統括。主な展覧会企画に「蜷川実花with EiM:儚くも煌めく境界 Where Humanity Meets Nature」(弘前れんが倉庫美術館、2024)、オンライン展覧会「距離をめぐる11の物語:日本の現代美術」展(主催:国際交流基金、2021)、「昭和の肖像:写真でたどる『昭和』の人と歴史」展(横浜美術館の後、アーツ前橋とナショナル・ギャラリー・オブ・カナダへ巡回、2017-2019)、「BODY/PLAY/POLITICS」展(横浜美術館、2016)、 「奈良美智:君や僕にちょっと似ている」展(横浜美術館、青森県立美術館、熊本市現代美術館、2012-2013) など。

応募者に望むこと

TERRADA ART AWARDの面白さは、広くて天井の高い空間と向き合い、プランづくりから展示の実現までを自らプロデュースする制作の経験と、アウォードの注目度の高さによって、一度に多くの人の目に作品が触れることで、作品が幅広い鑑賞者に受容される経験とを、一続きのものとして得られる機会だという点にあると思います。自身の経験や作風を活かしつつ、さらなる飛躍を目指して、挑戦的な作品に出会えることを期待しています。

高橋 龍太郎

精神科医、現代アートコレクター

高橋 龍太郎

1946年生まれ。東邦大学医学部卒、慶応大学精神神経科入局。国際協力事業団の医療専門家としてのペルー派遣、都立荏原病院勤務などを経て、1990年東京蒲田に、タカハシクリニックを開設。専攻は社会精神医学。デイ・ケア、訪問看護を中心に地域精神医療に取り組むとともに、心理相談、ビジネスマンのメンタルヘルス・ケアにも力を入れている。1997年より、日本の若手作家を中心に、本格的に現代美術のコレクションを開始。所蔵作品は3500点以上に及ぶ。高橋龍太郎コレクション展は過去国内26館・国外1館の美術館等で開催された。ニッポン放送『テレフォン人生相談』担当。近著に『現代美術コレクター(講談社現代新書)』がある。

応募者に望むこと

時代の表層をなでるような作品が、マーケットでもてはやされています。
しかし、そんな瞬く間に消費されてしまうような表現ではなく、時代を抉って裏返してしまうような作品を期待しています。

竹久 侑

キュレーター、水戸芸術館現代美術センター 芸術監督

竹久 侑

主な企画展に「3.11とアーティスト:10年目の想像」(2021)、「アートセンターをひらく」(2019-2020、2023)、作家個展として「中﨑透 フィクション・トラベラー」(2022)、「浅田政志 だれかのベストアルバム」(2022)、デイヴィッド・シュリグリー「ルーズ・ユア・マインド-ようこそダークなせかいへ」(2017-2018)、「田中功起 共にいることの可能性、その試み」(2016)、「大友良英 アンサンブルズ2010─共振」(2010)。展覧会のほか、市民協働プロジェクトや学校訪問プログラムにも取り組む。「水と土の芸術祭」2012ディレクター。

応募者に望むこと

TERRADA ART AWARDは、門戸を若手から中堅まで、多様な表現領域で活動するアーティストに開き、ファイナリストたちは用意された制作費をもとに新作を創作して多くの人びとに向けて発表することのできる貴重な機会です。前回、多くの来場者があったというこのアウォードに向けて、なぜ、いま自分はその作品をつくるのか、自分の表現の独自性はどこにあるか、考え抜かれたプランと出会えることを楽しみにしています。

椿 玲子

森美術館キュレーター

椿 玲子

京都大学大学院人間・環境学研究科修士、パリ第1大学哲学科現代美術批評修士修了後、2002年より森美術館所属。「医学と芸術」(2010)、「宇宙と芸術」(2016)、「レアンドロ・エルリッヒ」 (2017-2018)、「六本木クロッシング2019」(2019)、「私たちのエコロジー」(2023-2024)、「ルイーズ・ブルジョワ」(2024-2025)などを企画。小企画ではホー・ツーニェン、タラ・マダニ、カミーユ・アンロ、高田冬彦、シプリアン・ガイヤール、ツァオ・フェイ、山内祥太などを紹介。現在、「MAMリサーチ011:東京アンダーグラウンド 1960-1970年代」、「MAMスクリーン021:ガブリエル・アブランテス」を準備中。成安造形大学客員教授(2013-2014)、青山学院大学非常勤講師(2019-2023)の他、執筆・講演も行う。

応募者に望むこと

アートは古くから存在しており、本当に様々な表現が可能です。数多の自然災害やパンデミック、戦争などを記録してきたメディアでもあります。AIなどのテクノロジーがフィーチャーされると同時に、近代文明以前の思想や手法が注目されている現代は、面白い時代だともいえるでしょう。この時代に、あなたが、心から作りたいと思うもの、表現を、観てみたいです。

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