ファイナリスト

国際的な舞台で活躍し現代アートに深い見識を持つ選考員12名による選考の結果、2021年8月、国内外1,346組より5組のファイナリストが選出されました。

川内 理香子寺瀬 由紀 賞
かわうち りかこ

「TERRADA ART AWARD 2021 ファイナリスト展」展示風景  Photo Tatsuyuki Tayama

身体のありどころはどこだろうか。
コロナウイルスによって、自身の身体や、自分が保有するものへの意識、その境目の曖昧さが顕著になった。今、神話の世界のように、内と外、自己と他者の境は複雑で入り混じってしまうものということを突きつけられていると思う。
今回の展示では、内と外の境目のなさが暗喩される神話をモチーフにした、自然と動物、身体が入り混じる世界を描いた油彩のペインティングとともに、針金の半立体、ネオン管の彫刻を制作し、様々な線のあり方を一堂に展示する。それらが互いに響き合い、重なり合うことで、ネオン管の光の脈動のように、それぞれの線が常に動き続けているようなイメージを感覚できる展示にしたいと考えている。多様な線の中に1つの身体を見せたい。

最終審査員コメント

川内理香子は線を引き、交え、重ね、引き離し、自己の思考や観点を表現する。それは紙やキャンバスの二元性を超えて、近年ではネオン菅や針金という立体性をも巻き込みながら有機的に対話をし、最終的に目に見えない線で互いを巻き込み合い、つながる。川内はそれら一つ一つの作品とまるでボクシングをするように向き合い、衝動性と無意識の間で制作していく。今回、一つの統一された空間の中で「世界」を作り出すTERRADA ART AWARD 2021ファイナリスト展での展示方法は、川内にとって初めての試みとのことだが、今後の作家の制作活動において重要な意味を持つように思う。川内が長年テーマとしている自己と他者、内と外、精神と肉体の対立軸は、アンビバレントでありながら常に対話を持つことで互いの存在を認識しているからだ。川内から紡ぎ出される線の集合体が、ダイアログを持つ術を見つけたことで、今後どのような展開を見せるのか、ますます楽しみである。
(寺瀬由紀/アートインテリジェンスグローバル ファウンディングパートナー)

ファイナリストコメント

今回、展示する機会をいただき、また賞もいただくことができてとてもうれしく思います。床の色を染め、展示空間全体で1つの絵画を作り上げる新しいチャレンジを経て、さまざまな気づきが自分の中でありました。イメージを実現化する時、そこにはイメージの上では予期しないものが必ず出てきます。それをどう拾い上げていくかで、作品はより息づくものになると思います。今回の展示を実現する中で、また実現した上で出会えたものを、次の自分の制作へと還元させたいです。
寺瀬さんをはじめ審査員の方々とのお話も勉強になり、応募する資料作りから始まり、作品制作、展示、審査会と、本アウォードを通じて自分の作品を内からも外からも、より理解を深めていく、充実した時間を過ごせました。ありがとうございました。

PROFILE
《Forest of the night》2019 Photo:Shintaro Yamanaka[Qsyum!]

Artist Profile

1990年東京都生まれ。2017年多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻油画研究領域修了。2014年『第1回CAF賞』保坂健二朗賞、2015年『SHISEIDO ART EGG』SHISEIDO ART EGG賞を受賞。主な展覧会に、個展『afterimage aftermyth』(六本木ヒルズA/Dギャラリー、2021年)、個展『drawings』(WAITINGROOM / OIL by 美術手帖、2020年)、個展『Myth & Body』(三越コンテンポラリーギャラリー、2020年)など。

久保 ガエタン真鍋 大度 賞
くぼ がえたん

  • 「TERRADA ART AWARD 2021 ファイナリスト展」展示風景  Photo Tatsuyuki Tayama
「TERRADA ART AWARD 2021 ファイナリスト展」展示風景  Photo Tatsuyuki Tayama

ここ(会場)がまだ海の中だった頃。一人の漁師が光り輝く面を引き上げた。それは牛頭天王の面であったことからこの地は天王洲と呼ばれる様になったという。1798年には一匹の鯨が打ち上げられ、それを祀る鯨塚が現在も残されている。その後、黒船に対する海防強化のため第四台場として埋め立てられた天王洲は、海から地へと拡張された。現在、羽田空港新飛行ルートとして会場の頭上450mを航空機が通過している。
太平洋の彼方にいる一匹の鯨の鳴き声から、頭上の航空機が発する轟音まで、繰り返される音がもたらすものとは。海の向こうからやってくる何かによって空間のレイヤーを変容させてきたこの地で、その起源を考察し未来の音を発してみよう。
本作はスペクトログラムと呼ばれる、映像を音声変換したもの、および鯨の鳴き声を会場外にある桟橋に転送し、海中スピーカーによって音を流している。また、海中マイクによって海の中の音を会場に転送している。

最終審査員コメント

久保は初期衝動をきっかけに情報探索の旅をスタートし偶然やノイズを巧妙に取り入れ、注意深く取捨選択を重ねながら連鎖的にリサーチのスコープを変更し、最適化では作り出せない探索経路を経て物語を作り出す。物語は展示空間内外に設置されたさまざまな装置に分解、展開されることによって、鑑賞者はさまざまな視点で作品を鑑賞し、関係性を読み解くことが要求されるが、複雑なネットワークが作り出す高次元の情報を身体が認知できる状態に低次元化し、鑑賞可能な作品に変換している点は見事としか言いようがない。本プロジェクトのためだけに入念なリサーチを行い、高度な実装を伴う野心的な挑戦を実現した久保の今後の活動に期待を込めて賞を与えた。
(真鍋大度/Rhizomatiks ファウンダー、アーティスト、DJ)

ファイナリストコメント

大賞のみが賞金を得る公募展とは違い、本アワォードではファイナリストそれぞれに平等の予算とスペースが得られたことで、思い切り制作をすることができました。また「天王洲の海で音楽を流して鯨を呼ぶ」という、一見理解を得られないようなプランにもかかわらず、寺田倉庫の強みである天王洲の地盤の強さと、アート専門の協力会社のサポートで、場所を活かした会場内外での発表を実現することができました。本受賞によって真鍋さんと作家の視点によるトークを通して、作品を作ることの本質を導き出してもらうことができ、すでに次の作品を作りたくなっています!

PROFILE
『MOTアニュアル2020 透明な力たち』(東京都現代美術館)記録写真
2020 Photo:Keizo Kioku

Artist Profile

1988年東京都生まれ。2013年東京藝術大学大学院美術研究科修了。公益財団法人ポーラ美術振興財団在外研修員としてフランスにて研修。京都市芸術文化特別奨励者。糺の森会員。主な展覧会に、個展『天の虫』(世田谷美術館、2021年)、『不時着アブダクション』(児玉画廊|天王洲、2021年)、『MOTアニュアル2020 透明な力たち』(東京都現代美術館、2020年)、『KYOTO STEAM 2020』(京都市京セラ美術館 東山キューブ、2020年)など。鑑賞者の身体感覚に訴えかける奇怪なインスタレーションを制作している。

スクリプカリウ落合 安奈鷲田 めるろ 賞
すくりぷかりうおちあい あな

  • 「TERRADA ART AWARD 2021 ファイナリスト展」展示風景  Photo Tatsuyuki Tayama
「TERRADA ART AWARD 2021 ファイナリスト展」展示風景  Photo Tatsuyuki Tayama

ー鎖国と国際結婚から見る、帰属意識の姿ー
本作は、2019年にベトナムのホイアンから始まった、3部作とも言える一連のビデオインスタレーションの第3章に当たる。 2019年ベトナムにて、江戸時代に「鎖国政策」に翻弄されながら異国の地で永い眠りについた、ある1人の日本人の墓と出会った。墓は、日本の方角に向けて建てられている。また墓の主は、鎖国政策によりベトナムのフィアンセとの仲を引き裂かれたものの、海を越えて会いに行く姿が言い伝えとして残されている。1つの墓の存在から、国策や、時に人々を隔てる境界を越えていく個人の想いについて考えさせられる。
ホイアンはかつて日本人街があり、日本による様々な研究も行われていたが、彼については僅かな情報としての伝説が複数あるということに留まり、正確な足取りを掴むことは困難を極めた。そんな中、墓に刻まれていた情報を頼りに、墓の眼差しの先にある彼の生まれ故郷の長崎の平戸を訪れる。すると、「鎖国と国際結婚」、「隔たりを生むものと、それを越えてゆくもの」を象徴する様々なものとこの土地を通じて出会っていくことになった。時代や空間を超えた眼差したちが、サウンドとイメージの重なりによって浮かび上がる。

最終審査員コメント

人と人を分断しつつもつなぐ海という境界線をテーマにした映像インスタレーション。展示空間への入り口には、開かれたカーテンの向こうに、海の中に小さく写る人物を撮ったモノクロ写真があり、没入感のある作品世界への期待を高める。映像のスクリーンとして、建物の内と外を繋ぎながら風に揺れるカーテンを効果的に用い、映像の中の波と、上映装置を繋ぐことに成功している。円形に弧を描くカーテンにはベトナムの、反対の壁面には平戸の映像が向き合うように現れ、見る人も取り囲まれるように、その二つの引き裂かれた世界の中間に身を置くことになる。自らのアイデンティティを問うことを起点としながら、普遍的なテーマに昇華している。
(鷲田めるろ/十和田市現代美術館 館長)

ファイナリストコメント

このたびは、「TERRADA ART AWARD 2021」にて鷲田めるろ賞をいただき、大変光栄に思います。本作は、2019年にベトナムのホイアンで江戸時代の日本人の墓に出会ったことからビデオインスタレーション作品の第一章が生まれました。審査では、第一章から、最終章となる今回の第三章までの流れについても注目していただき嬉しく思いました。
また本アワォードの手厚いご支援のおかげで、今回はこれまでの作品の中でも最大規模のプロジェクトに挑戦することができました。さまざまなプロフェッショナルの方々の力をお借りし、新たな取り組みとしてサラウンドのサウンド表現と、演劇性のある時間軸を持ったインスタレーションを生み出すことができました。今回の貴重な経験を糧に、これからも「リアリティー」を追求した新たな表現に取り組んでまいります。

PROFILE
《骨を、うめる-one's final home》2019

Artist Profile

1992年埼玉県生まれ。2016年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業(首席・総代)。同大学博士課程在籍。2020年『Forbes 30 UNDER 30』受賞。主な展覧会に、個展『journey』(AKIO NAGASAWA GALLERY AOYAMA、2021年)、個展『Blessing beyond the borders- 越境する祝福 -』(埼玉県立近代美術館、2020年)、『Y.A.C. RESULTS 2020』(ルーマニア国立現代美術館、2020年)など。日本とルーマニアの二つの母国に根を下ろす方法の模索をきっかけに、「土地と人の結びつき」という一貫したテーマのもと様々な素材・手法の作品を、国内外で発表。

持田 敦子片岡 真実 賞
もちだ あつこ

  • 「TERRADA ART AWARD 2021 ファイナリスト展」展示風景  Photo Tatsuyuki Tayama
「TERRADA ART AWARD 2021 ファイナリスト展」展示風景  Photo Tatsuyuki Tayama

仮設的な素材を用い、即興的に組み上げた階段で空間を埋め尽くし、様々なルートを空間内に設定する。 階段は作り、分解し、また作り直すことができる機能を持ち、実際に登ることができる強度で制作されている。立体状の迷路のようになっている階段の上を歩くことで、空間を新たな視点から捉えることができる。
階段は2013年より何度も手がけてきた私にとって重要なモチーフである。足を一歩あげるという単純な行為、そしてその足を受け止める台、支える柱、その組み合わせで空間を自由に探求していくことができる。本作品では、屋内屋外問わず、傾斜地や崩壊地も含めたどのような空間にも展開可能なシステムを目指している。
階段作品を作る場合は、常に安全管理との葛藤が起こる。社会が安全を求めるのは当然であるが、その中でいかに無謀な目標を立てられるのか、リスクを受け止め未知の物事に挑戦できるのかが、その社会のスタンスを表す一つの試金石となる。

最終審査員コメント

持田敦子は、都市景観の一部でもある工事現場の単管パイプと木材で、行き先の不確定な、いわば無用の螺旋階段をインスタレーションとして構成した。とりわけ3D曲げパイプによる構造は工業素材を立体作品へと転換させるための中心的役割を果たしている。彼女がこれまで既存の建築物に介入してきた仕事は、1970年代に家を切断したゴードン・マッタ=クラークを連想させるが、今回の寺田倉庫の空間では、周囲のコンクリート壁や配管などとも一体化し、収納された倉庫内で成長し続ける有機的な螺旋階段となった。芸術をオンラインで体験することの可能性と限界も見えてきたこの時期、空間に果敢に挑戦した持田の作品は、その不確実性や非生産性も含めて、今日的体験をもたらすだろう。
(片岡真実/森美術館 館長、国際芸術祭「あいち2022」 芸術監督)

ファイナリストコメント

このたび、片岡真実賞をいただくことになり、大変光栄に思います。今回の作品は私にとって新たな手法を用いたこともあり、難しい場面も多々ありましたが、展覧会のオープンまでこぎつけられてほっとしています。ぜひ多くの方に、足元や頭上に注意を払いながら、作品鑑賞を楽しんでいただきたいと思います。
今回の作品制作で、設計だけでなく現場を取り仕切っていただいたdot architects土井亘さん、鉄加工から施工まで、いつも楽しみながら現場を盛り上げてくださったAtelier Tuaregの皆さん、イレギュラーな注文にもフレキシブルに対応していただいた株式会社スタックさん、そしてさまざまな面で制作をサポートしてくださった一般財団法人おおさか創造千島財団の方々に改めて感謝を申し上げます。

PROFILE
《T家の転回》2017 Photo : Ryuichi Taniura

Artist Profile

1989年東京都生まれ。長野県在住。2018年東京藝術大学大学院先端芸術表現学科、バウハウス大学大学院Public Art and New Artistic Strategies修了。公益財団法人ポーラ美術振興財団在外研修員としてドイツ、シンガポールにて研修。2018年『アートアワードトーキョー丸の内』今村有策賞、2018年『CAF賞』齋藤精一賞を受賞。主な展覧会に、『近くへの遠回り』(Centro de Arte Contemporaneo Wifredo Lam、国際交流基金、2018年)、『リボーンアートフェスティバル』(2019年)、『2020年のさざえ堂 – 現代の螺旋と100枚の絵』(太田市美術館・図書館、2020年)など。

山内 祥太金島 隆弘 賞
やまうち しょうた

  • 「TERRADA ART AWARD 2021 ファイナリスト展」展示風景
「TERRADA ART AWARD 2021 ファイナリスト展」展示風景  Photo Tatsuyuki Tayama

人間とテクノロジーの恋愛模様をパフォーマンス・インスタレーションとして描き出す。人間とテクノロジーは「皮膚の服」を通して一つになろうと試みる。テクノロジーは人間の持つ有限の黄昏に、人間はテクノロジーの持つ無限の銀河に想いを馳せる。抱きしめあっているのかそれとも拘束しあっているのか、互いは私秘的距離の海へと溺れてゆく。人間がテクノロジー依存症であると同時にテクノロジーもまた人間依存症なのである。テクノロジーを愛しながら、人間も愛するためにはどうしたらいいのか。快楽と絶望の中間領域を見つけ出し、現在生きる我々人間の性に投影したい。

最終審査員コメント

歳を重ねるごとに複雑化するテクノロジーに対峙しながら生きてきた私達の世代にとって、今の時代を支配するテクノロジーと冷静に向き合い、客観的に作品に取り込む姿勢を、デジタルネイティブと括られる世代から感じられたのは、とても新鮮な体験でした。
テクノロジーを依存症という視点で作品に持ち込むだけでなく、最先端の素材を扱う技術力、さまざまな世代のパフォーマー、そしてせめぎ合う人間の複雑な感情を組み合わせながら、絶妙なバランスで成り立つ本作にはただただ圧倒され、そしてシュールに舞うゴリラの儚さに目を奪われました。
今回一新されたアウォードで選ばれた5名のファイナリストの作品が一堂に会する本展は、今の時代の多様な表現と、次の世代の勢いを感じられる貴重な機会となりましたが、個性溢れる展示が並ぶなか、私の賞を山内祥太さんにお渡しできたことをうれしく思います。
(金島隆弘/ACKプログラムディレクター、京都芸術大学客員教授)

ファイナリストコメント

このたびは金島隆弘賞を受賞させていただきありがとうございました。まずは、今回の制作に関わってくれたプログラマーの曽根さんをはじめ、制作チームにお礼が言いたいです。本当にありがとうございました。今僕は新たな景色の目の前に立ち尽くしています。 今回初めて自作を説明するにあたって「愛」という言葉を用いました。最初は後ろめたい気持ちがありました。僕なんかが「愛」なんて言ってもよいのだろうかと。
だけど、詩を書いているうちにあらゆる活動、あらゆる行為が全て「愛」や「人間」についての問いに接続されていくのではないかということに気づきました。テクノロジーを愛しながら人間を愛するためにはどうしたらいいのか。今後もしばらくこの問いかけを続けていきたいです。

PROFILE
《我々は太陽の光を浴びるとどうしても近くにあるように感じてしまう。》
2021 Photo:Koichi Takemura

Artist Profile

1992年岐阜県生まれ。神奈川県在住。2016年東京藝術大学映像研究科メディア映像専攻修了。主な展覧会に、『第二のテクスチュア(感触)』(Gallery TOH、2021年)、『水の波紋2021展 消えゆく風景から ― 新たなランドスケープ』(ワタリウム美術館、2021年)、『多層世界の中のもうひとつのミュージアム——ハイパーICCへようこそ』(NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]、2021年)、『六本木クロッシング2019:つないでみる』(森美術館、2019年)など。

ファイナリスト展

「TERRADA ART AWARD 2021 ファイナリスト展」では、倉庫をリノベーションした、アーティストの世界観・才能を開花させる空間を舞台に、ファイナリスト5組が「TERRADA ART AWARD 2021」へエントリーした展示プランによって独自の展示を創り上げ、未発表の新作を含む作品を発表します。

会期
2021年12月10日(金)~12月23日(木)
※会期中無休
時間
11:00~19:00(最終入館 18:30)
入場料
無料
予約方法
  • ご希望の日時を予約フォームよりご指定の上、予約へお進みください。
  • ご予約の時間枠内であれば、いつでもご入場いただけます。
  • ご予約の時間枠を過ぎてのご来館はご遠慮ください。
  • 入れ替え制ではございませんが、混雑時は最大90分程度のご滞在にご協力ください。
  • 再入場はできません。
  • 山内祥太作品のパフォーマンスは下記の時間で実施いたします。
    13:00~13:30/15:30~16:00/18:00~18:30
     ※時間は予告なく変更する場合がございます。
  • 持田敦子作品は中学生以上から体験可能とさせていただきます。
    ヒールの高い靴、ロングスカートをお召しの方はご案内できません。
    その他、会場スタッフの指示に従ってご観賞ください。

※予約受付は終了いたしました。

会場
寺田倉庫 G3-6F
(東京都品川区東品川2-6-10 寺田倉庫G号)
GoogleMap
アクセス
東京モノレール羽田空港線 天王洲アイル駅中央口 徒歩5分
東京臨海高速鉄道りんかい線 天王洲アイル駅B出口 徒歩4分
※施設内に駐車場はございません。お近くの有料駐車場をご利用ください。

オーディエンス賞 1組:100万円 
※投票受付は締め切りいたしました。

「TERRADA ART AWARD 2021 ファイナリスト展」では、一般投票を通して、オーディエンス賞1組(賞金100万円)を選出いたします。ぜひ実際の作品をご観賞の上、展示会場にてご投票ください。

オンライン投票

会期中のご来場が難しい方にむけて、オンラインでの投票受付を開始いたしました。ファイナリストによる作品紹介ムービーをご覧いただき、以下の「投票する」ボタンからご投票ください。

「TERRADA ART AWARD 2021 ファイナリスト展」作品紹介ムービー(約20分) Filmed & Edited by SUZUKI Yusuke (USKfoto)

オーディエンス賞 結果

受賞者 山内祥太

会場およびオンラインでの投票の結果、TERRADA ART AWARD 2021 オーディエンス賞 受賞者は山内祥太氏に決定いたしました。

最終審査員 × ファイナリスト オンライン対談

最終審査員とそれぞれ各審査員賞を受賞したファイナリストとのオンライン対談を実施しました。

片岡 真実 × 持田 敦子

金島 隆弘 × 山内 祥太

寺瀬 由紀 × 川内 理香子

真鍋 大度 × 久保 ガエタン

鷲田 めるろ × スクリプカリウ落合 安奈

選考員総評

最終審査員(二次選考を終えて)

片岡 真実

森美術館館長、 国際芸術祭「あいち2022」芸術監督

コンセプトやリサーチ・トピックに見る複雑さや複層性に対して、最終的な展示案から想像される体験の説得力が脆弱、という構図が全体的に顕著だった。アイディアを視覚的、構造的、空間的なアウトプットへと明快に転換するスキルは、TERRADA ART AWARDが目指すグローバルな舞台では確実に求められるものだが、その意味でファイナリスト5名の提案は、異なる関心事を固有の表現方法によって質の高い芸術作品へと昇華することが期待できるものだったといえるだろう。

金島 隆弘

ACKプログラムディレクター、京都芸術大学客員教授

寺田倉庫が現在取り組んでいるアート事業を有機的に繋ぎながら一新された今回の「TERRADA ART AWARD 2021」には、実に数多くの応募がありました。「前例は、あなたが創る」のテーマに相応しいユニークな提案も多く、二次選考に進んだアーティストからファイナリストを絞る作業も困難を極めました。応募作品のレベルの高さも理由の一つですが、最終審査員の現代アートに対する多様な視点、今の時代の中での現代アートのあり方の変化もその要因であり、このAWARDの審査への参加を通じて、改めてその状況を肌で感じることができた機会にもなりました。
ファイナリストに選ばれた5名は、寺田倉庫内の空間での展示を想定したそれぞれのプランの実現に向けて、これから準備に取り組むことになりますが、制作する作品が、技術や説明、コンセプトを飛び越え、圧倒的な表現として鑑賞者を取り込んでしまうような、そんなチャレンジを期待したいです。

寺瀬 由紀

アートインテリジェンスグローバル ファウンディングパートナー

未曾有の事態の真っ只中にいる2021年、誰も想像もしていなかった非現実の現実を我々は今生きています。人も物の物理的な動きも以前よりずっとスローダウンしているはずなのに、毎日朝から晩まで溢れ出す情報の洪水から水面に這いあがろうともがく不思議な日々。実際私自身も一時帰国もままならない中、今回のアワードの審査はそういった世界の変化に繊細に反応しているアーティストの皆さんと応募書類を通じて対話をしているような感覚に陥りました。私は今日本を出て大分経ちますが、現在日本国内では過去になかったレベルで現代美術への関心が高まっていると聞き、今回のアワードもそれを反映する応募数があったと伺っています。関心が高まっていることは喜ばしいことですが、それが一過性のブームではなく、継続していくよう我々も、アーティストの皆さんも、一緒に協力共闘共存していかなければなりません。そんな強い決意と願いを込めて。このアワードが息の長い、才能を導くプラットフォームとなりますように。

真鍋 大度

ライゾマティクス ファウンダー、アーティスト、インタラクションデザイナー、プログラマ、DJ

今回の応募では非常にバラエティー豊かな作品が揃い、現代アートという一つの枠で括ることの限界を感じると同時にフォーマットやメディアの多様性が生み出す混沌を観察することが出来た。一方で最終的に残った作品はインスタレーション作品が多く、審査や作品の傾向を一つ垣間見ることが出来たのではないだろうか。審査員によってさまざまではあるが、私は以下の様なことをクライテリアとして審査、評価に当たったことを記しておく。コンセプトが明確・明瞭か、好奇心がどこに向かっているか、作品が持つ社会的・政治的な意味はあるか、作品が持つインパクトがあるか、活動がユニークか、未来を切り開くポテンシャルがあるか、技術・クラフトのチャレンジがあるか、そして作家が表現を探究しているかどうか。この様に複数のベクトルで作品を審査したが、甲乙付け難い作品が並び最終審査に僅差で残った作品も多い。応募された作家は審査の結果に左右されずこれまで通り鋭意制作して欲しい。

鷲田 めるろ

十和田市現代美術館 館長

川内は身体性を感じさせるドローイングとネオン管などによる空間への広がりが面白く、自分の関心に沿って作品を積み重ねてきた安定感を感じる。久保は、東京都現代美術館で見た地震の揺れと音の振動を関係づける体感的な作品に惹かれた。今回も天王洲の場所に合わせた提案に期待。移動や距離を扱う落合は、自らのアイデンティティとも関係するような作品で、カーテンに海の映像を投影する展示のスマートさも魅力。持田は、既存の建物への大掛かりな介入が破格だが、今回、展示空間でどこまで面白く見せられるか。山内は映像技術を使った身体イメージの拡張をインスタレーションでうまく伝えられるか。多様性に富むセレクションになったと自負している。

一次選考委員

飯田 志保子

キュレーター、国際芸術祭「あいち2022」チーフ・キュレーター(学芸統括)

社会的にも物理的にも人との距離を求められる、この特異な時代の顕れを強く感じました。行動に(自主)制限があるためか、あるいは作家としての展示発表歴が1年以上10年未満というキャリアのためか、国際的な視座よりも日本国内や自らの日常に根差した表現が多かったように思います。そのなかでも、表現領域を問わず、現代社会に対して個人の視点から問題意識を投影した応募者が印象に残りました。
その一方で、自ら設定した芸術表現固有の課題や、生の証としての表現など、時勢や社会を反映するより普遍的な表現欲求に基づく作品も多く見ることができたのは、本審査において刺激的なことでした。

小川 希

Art Center Ongoing 代表

現代の日本において、これだけ多くのアーティストが真剣に自らの表現を志しているということにまず驚きを覚えました。表現方法やコンセプトなども多様でそのことには希望が持てましたが、ただこちらの予想を超えてくるような表現を展開している作家はそれほど多くはいなかった印象を受けました。私たちが生きている現代社会において本当に必要なアートとは何かという問いに対して、これまでのコンテキストや価値観を今一度疑うことから始めること、そこからしか新たな魅力あるアートは生まれることはないのであろうと、審査を終えて感じました。

高橋 瑞木

CHAT, Centre for Heritage, Arts and Textile エグゼクティブディレクター兼チーフキュレーター

パフォーマンス、ダンス、メディア・アートの応募が非常に多かったのと、日本全国各地からの応募があったことが印象的でした。
当たり前のことかもしれませんが、アートとは美術館やギャラリーといった美術の展示に特化した場所のみで発表、鑑賞されているわけではなく、さまざまな日常の生活空間で展開されていたり、幅広い層が参加し、それぞれの方法で理解されているものだということを再確認しました。応募書類から伺えるアートの多様性と、TERADA ART AWARDが目指す方向性がどのようにシンクロするのか興味深く見守りたいと思います。

高橋 龍太郎

精神科医、現代アートコレクター

アートとマーケットは程よい距離を保ちつつというのが健全な姿だと思うのですが、ともすればマーケット主導というのが、最近の傾向かと思う。それを是正していくにはもっとアートの側が自律的力をつけなければならないところです。応募作品は、そんなことを杞憂に思わせる程、熱量を感じさせるものが多かった印象です。しかも幅広い表現が目立ち、新しい時代のアートのあり方を感じさせてくれました。

現代アートチーム 目[mé]

アーティスト 荒神明香、ディレクター 南川憲二、インストーラー 増井宏文

とても大事な経験をさせていただきました。まず、応募されたアーティストの活動が、高い意識と技術を持ち洗練された作品と言えるものが多いことに驚きました。そして更に、どこにも収まらない、まるで理に適わないような活動もいくつかありました。誰にも理解されないことへの覚悟と、同時にそれとは全く矛盾するように、どこまでも伝わるということを信じて作られた作品。作者固有の「実感」と「本当」によってしか、生まれ得ることがなかったもの。私たちにとっては、それはまさに「挑戦」と言えるものでした。そんな「挑戦」によってファイナリストに進まれた方には、もう思う存分、力を発揮して欲しいと思います。また、今回は結果に繋がらなかったとしても、本当の「挑戦」をされているアーティストの方々には、心からの敬意と共に「伝わってるよー!」と、エールを送りたいです。自分たちも作り手として、負けないように挑戦を続けたいです。

森 司

公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京 事業推進室事業調整課長、女子美術大学芸術学部アート・デザイン表現学科アートプロデュース表現領域 特別招聘教授

応募件数の多さが、若きアーティストが世に問える場所、登竜門となる場を渇望(必要)としている実情を垣間見た気がしています。
平面絵画の応募数が多く、ペインティングに魅了され、且つそこに新しい可能性を探求する姿勢を強く感じました。コレクティブな形で複数の作家が共創するワークが少ないことも気になった点となります。
社会状況との間合いのとり方は、今後ますます問われるようになるとおもっていますが、その移行する過渡期かと思う反面、表層的な応答ではなく、各人のアート観をベースにする独自の歩みをされているようにも思えました。

山本 憲資

Sumally Founder & CEO

想像以上にクオリティが高い作品が多く、審査は楽しくそしてエネルギーの要るものでした。写真だけではなくて、実物を見てみたいなと強く思わせる作品もたくさんありました。社会の混迷が増していく中、みなさんもその混迷と対峙しながら制作をされていることがよく伝わってきました。時代の方位磁針としても、アートがますます必要とされていく時代なのでは、と日々感じています。
作家が自分と向き合い続けることでじわじわと炙り出されるパーソナリティと技術の積み上げがうまく融合し、そしてそれらがうまく時代とシンクロしたタイミングこそがアーティストとして飛躍していくタイミングになっていくのだと思うのですが、今回のアワードが応募されたみなさまのそういった機会のひとつになることを願いながら、今後のますますのご活躍を楽しみにしています。