最終審査員

本アウォードが目指すべき方向性として、現代美術の、さらには文化芸術の歴史の中でコンテクストを生成し、 豊富な知識と国際的な視点、独自性と先進性のある思考と感性を持ち、新しい表現や論考を切り拓いてきた5名を最終審査員としてお迎えします。

片岡 真実

片岡 真実

森美術館 館長、 国際芸術祭「あいち2022」芸術監督

ニッセイ基礎研究所都市開発部研究員、東京オペラシティアートギャラリー・チーフキュレーターを経て、2003年より森美術館。2020年より現職。2007~2009年はヘイワード・ギャラリー(ロンドン)にて、インターナショナル・キュレーターを兼務。第9回光州ビエンナーレ(2012年)共同芸術監督。第21回シドニー・ビエンナーレ芸術監督(2018年)。CIMAM(国際美術館会議)会長(2020-2022年)、京都芸術大学大学院客員教授、東京藝術大学客員教授。文化庁アートプラットフォーム事業・日本現代アート委員会座長。AICA(美術評論家連盟)会員。その他、日本およびアジアの現代アートを中心に執筆・講演・審査等多数。

審査員から応募者に望むこと

世界の現代アート界は過去数十年の間に急速に肥大化し、全貌を把握することはもはや不可能です。地域によって固有の文脈がありながら、そうした差異を越えて世界で高く評価されるアーティストがいる一方で、特定の国や地域に限って圧倒的な人気を誇るアーティストもいます。美術館や国際展の評価と市場の評価も必ずしも一致していません。そんななかで自分の立ち位置を見据え、より広い世界へ挑もうとしているアーティストに出会いたいです。

金島 隆弘

金島 隆弘

ACKプログラムディレクター、京都芸術大学客員教授

1977年東京生まれ、京都在住。2002年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了後、ノキア社、株式会社東芝、東京画廊+ BTAP、ART iTなどを経て、2007年に FECを設立。展覧会企画、交流事業のコーディネーション、アーティストの制作支援、東アジアの現代美術の調査研究などを手がける。2011年よりアートフェア東京エグゼクティブディレクター、2016年よりアート北京アートディレクターを経て、現在は京都市立芸術大学大学院美術研究科博士課程に在籍しながら、2021年より国立京都国際会館で開催される新しい形のアートフェアACK (Art Collaboration Kyoto)のプログラムディレクターを務める。

審査員から応募者に望むこと

このAWARDは、多様な審査員の方に自身の作品を見てもらう機会として、とてもユニークな体制になっています。ジャンルにとらわれず、いかに自分に向き合い、自分を出せるか。より多様な視点で作品を観られる可能性の高いこの機会に、枠に納まらない「なんだろう?」と思わせるような、自分にチャレンジしている、そんな作品と出会いたいです。

寺瀬 由紀

寺瀬 由紀

アートインテリジェンスグローバル ファウンディングパートナー

2021年6月末まで、世界で最も歴史のあるオークションハウス、サザビーズの現代美術部門、アジア統括及びシニア・ディレクターを歴任。成長目覚ましいアジアの現代美術マーケットにおいて、顧客開拓及び市場拡大を担う。在任中、同社のアジアにおける現代アートオークション売上は3倍の成長を記録。2021年11月より、NYと香港を本社とするアートインテリジェンスグローバル社をサザビーズ社ファインアーツ部門前チェアマンらと共同設立。アジアがますます重要性を増し、日々刻々と変化するアート市場において、グローバルな経験、ネットワーク、知見を活かし類を見ないトップレベルのサービスの提供を行う。

審査員から応募者に望むこと

今、予想だにしなかった世界が私たちの目の前に広がっています。このような時代に、私たちはどのようなアートを生み出すことができるのか、アートはどんな役割を果たせるのか。なぜ、アートが必要なのか。こんな時代だからこそ、こういった本質を突いてくるような、誰も見たことのないような作品を、待っています。

真鍋 大度

真鍋 大度

ライゾマティクス ファウンダー、アーティスト、インタラクションデザイナー、プログラマ、DJ

東京理科大学理学部数学科、国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)卒業。2006年株式会社ライゾマティクス設立。2015年よりRhizomatiksの中でもR&D的要素の強いプロジェクトを行うRhizomatiks Researchを石橋素と共同主宰。2018年には日本国内では初となる個展を鹿児島県霧島アートの森で開催。
Ars Electronica Distinction Award, Cannes Lions International Festival of Creativity Titanium Grand Prix, D&AD Black Pencil, メディア芸術祭大賞など国内外で受賞多数。
これまで東京藝術大学美術学部先端芸術表現科、東京藝術大学美術学部デザイン科、東京工芸大学メディアアート学科にて非常勤講師を、また東京藝術大学社会連携センター 伊東順二特任教授開講講義「社会基盤としての芸術」にてゲスト講師、ブレーメン芸術大学では特任教授、慶應義塾大学環境情報学部では特別招聘教授を、現在公益財団法人アイスタイル芸術スポーツ振興財団では評議員を務めている。

審査員から応募者に望むこと

鷲田 めるろ

鷲田 めるろ

十和田市現代美術館 館長

1973年京都市生まれ。東京大学大学院修士(文学)修了。金沢21世紀美術館キュレーター(1999年から2018年)を経て現職。第57回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館キュレーター(2017年)。あいちトリエンナーレ2019キュレーター。主な企画に「妹島和世+西沢立衛/SANAA」(2005年)、「アトリエ・ワン いきいきプロジェクトin金沢」(2007年)、「金沢アートプラットホーム2008」、「イェッペ・ハイン 360°」(2011年)、「島袋道浩:能登」(2013–2014年)、「坂野充学 可視化する呼吸」(以上金沢21世紀美術館、2016年)、「越後正志 抜け穴」(ギャラリー無量、2017年)、「Identity」(nca | nichido contemporary art、2019年)、「インター+プレイ」(十和田市現代美術館、2020年、金澤韻との共同企画)など。

審査員から応募者に望むこと

アーティストである以前に、人としての生き方の重力がのしかかっている作品を見たいです。理解できないけれど、それ以外にはありえないことだけは確信できる作品。

一次選考委員

一次選考委員は、最終審査員による二次選考に進む約50組の候補者を選出します。
特にエマージングアーティストについての見識の深い方々をお迎えしました。

飯田 志保子

飯田 志保子

キュレーター、国際芸術祭「あいち2022」チーフ・キュレーター(学芸統括)

PROFILE

1998年の開館準備期から2009年まで東京オペラシティアートギャラリーに勤務。2009年より2011年までブリスベンのクイーンズランド州立美術館/現代美術館内の研究機関に客員キュレーターとして在籍後、韓国国立現代美術館2011年度インターナショナル・フェローシップ・リサーチャーとしてソウルに滞在。アジア地域の現代美術、共同企画、美術館やビエンナーレをはじめとする芸術文化制度と社会の関係に関心を持ち、ソウル、オーストラリア、ニューデリー、ジャカルタ各地域で共同企画展を実践。第15回アジアン・アート・ビエンナーレ・バングラデシュ2012、あいちトリエンナーレ2013、札幌国際芸術祭2014キュレーター、あいちトリエンナーレ2019 チーフ・キュレーター(学芸統括)を務めた他、2014年から2018年まで東京藝術大学准教授。 CIMAM(国際美術館会議)、AICA(美術評論家連盟)会員。

一次選考委員から応募者に望むこと

展示発表を始めてから1年以上10年未満は、試行錯誤を繰り返しながら作品が飛躍していく時期。いろいろな人に作品を見てもらうことで、手ごたえを感じたり自分の作品を違う角度から見直したりする機会になります。アワードは結果も大事ですが、自分の作品を鍛えるプロセスの一環としてぜひ挑戦してみて下さい。一次選考委員のひとりとして、 多彩なアーティストと出会えることを楽しみにしています。

小川 希

小川 希

Art Center Ongoing 代表

PROFILE

2002年から2006年に亘り、東京や横浜の各所を舞台に若手アーティストを対象とした大規模な公募展覧会『Ongoing』を、年一回のペースで企画、開催。その独自の公募・互選システムにより形成した数百名にのぼる若手アーティストネットワークを基盤に、既存の価値にとらわれない文化の新しい試みを恒常的に実践し発信する場を目指して、2008年1月に東京・吉祥寺に芸術複合施設Art Center Ongoingを設立。現在、同施設の代表を務める。2009年より東京都から依頼を受け、JR中央線高円寺駅から国分寺駅周辺を舞台に展開する地域密着形アートプロジェクトTERATOTERAのディレクターに就任。アート、音楽、ダンス、映像など様々なアートを街中で展開している。

一次選考委員から応募者に望むこと

アートの世界が作ったコンテキストに則った表現は全然期待しません。そんなのは上の世代に任せておいて、「マジでこれなんなの?」と審査する側を置いてけぼりにしてくれるようなブッチギリの表現を待っています。

高橋 瑞木

高橋 瑞木

CHAT, Centre for Heritage, Arts and Textile エグゼクティブディレクター兼チーフキュレーター

PROFILE

ロンドン大学東洋アフリカ学院MAを修了後、森美術館開設準備室、水戸芸術館現代美術センターで学芸員を務め、2016年4月元紡績工場内に設置されるCHAT開設準備のため香港に移住。主な国内外の企画として「Beuys in Japan:ボイスがいた8日間」(2009)「新次元:マンガ表現の現在」(2010)「クワイエット・アテンションズ 彼女からの出発」(2011)「高嶺格のクールジャパン」(2012)、「拡張するファッション」(2013、以上は水戸芸術館)。「(In)tangible Reminiscence」(2017)、「Unfolding: Fabric of Our Life」(2019)、「N S Harsha: Gathering Delights」(2019、以上はCHAT)など。

一次選考委員から応募者に望むこと

TERRADA ART COMPLEXは日本の現代アートの新しい発信拠点として香港でも注目されています。COVID-19のパンデミックによって世界中の人々が自然や他者に対する接し方が問われているなか、日本を拠点とするアーティストがどのような想像力を発揮し、作品をとおして物事の認識を刷新してくれるのか、楽しみにしています。

高橋 龍太郎

高橋 龍太郎

精神科医、現代アートコレクター

PROFILE

1946年生まれ。東邦大学医学部卒、慶応大学精神神経科入局。国際協力事業団の医療専門家としてのペルー派遣、都立荏原病院勤務などを経て、1990年東京蒲田に、タカハシクリニックを開設。 専攻は社会精神医学。デイ・ケア、訪問看護を中心に地域精神医療に取り組むとともに、心理相談、ビジネスマンのメンタルヘルス・ケアにも力を入れている。
1997年より、日本の若手作家を中心に、本格的に現代美術のコレクションを開始。
所蔵作品は2000点以上に及ぶ。
高橋龍太郎コレクション展は過去国内20館・国外1館の美術館等で開催された。
ニッポン放送『テレフォン人生相談』担当。近著に『現代美術コレクター(講談社現代新書)』がある。

一次選考委員から応募者に望むこと

今私たちの空間はCOVID-19によって見えない壁で分断されています。でもこの壁はそれ以前にも見えない分断として様々に存在していました。アートこそ、このガラスの壁を破壊するものなのです。そんな力強い、でも繊細な作品を期待しています。

現代アートチーム 目[mé]

アーティスト 荒神明香、ディレクター 南川憲二、インストーラー 増井宏文

PROFILE

2015年合同会社マウスプラストゥ設立、2018年〜 東京藝術大学にて非常勤講師。
個々のクリエイティビティを特化し、連携を重視するチーム型芸術活動。「果てしなく不確かな現実世界の可能性を信じ、その先へ鑑賞者の実感を引き寄せようとする」作品を展開。中心メンバーは、アーティストの荒神明香(2009年東京藝術大学修士課程修了)ディレクターの南川憲二(2009年東京藝術大学修士課程修了)インストーラーの増井宏文(2004年 成安造形大学卒業)。主な作品・展覧会に《たよりない現実、この世界の在りか》(資生堂ギャラリー/2014年)、《Elemental Detection》(さいたまトリエンナーレ 2016)、《非常にはっきりとわからない》(千葉市美術館/2019年)などがある。第28回タカシマヤ文化基金タカシマヤ美術賞。

一次選考委員から応募者に望むこと

アーティスト 荒神明香
ディレクター 南川憲二
インストーラー 増井宏文
森 司

森 司

公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京 事業推進室事業調整課長、女子美術大学芸術学部アート・デザイン表現学科アートプロデュース表現領域 特別招聘教授

PROFILE

1960年愛知県生まれ。水戸芸術館現代美術センター学芸員を経て、東京アートポイント計画の立ち上げから関わる。ディレクターとしてNPO等と協働したアートプロジェクトの企画運営、人材育成プログラムを手がける。東京アートポイント計画のほかにも複数のアートプロジェクト事業の統括を務め、Tokyo Art Research Labディレクター、Art Support Tohoku-Tokyo(東京都による芸術文化を活用した被災地支援事業)ディレクター、リーディングプロジェクト(「TURN」「東京キャラバン」)ディレクターも務める。
「ディレクター日記」連載中
アーツカウンシル東京ウェブサイト「東京アートポイント計画通信(ブログ)」
東京アートポイント計画noteマガジン

山本 憲資

山本 憲資

Sumally Founder & CEO

PROFILE

1981年神戸生まれ。広告代理店勤務、『GQ JAPAN』の編集者を経て、株式会社サマリーを立ち上げ、スマホ収納サービス『サマリーポケット』も好評を博す。スタートアップの経営者として奮闘する傍ら、現代アートをはじめとして食、音楽などへの造詣も深い。

一次選考委員から応募者に望むこと

ファイナリストは賞の賞金を活用して新作の制作を必須とする点がこのアワードの特徴のひとつで、まだ実績が少ないアーティストの方はもちろん、少し作風が定まってきて、よりスケールの大きな作品や、さらに手の込んだ作品にトライしてみたいというアーティストの方にとっても絶好の機会のはずです。仕事の一番の報酬は、仕事なのだと思います。みなさんの作品を拝見できること、楽しみにしています。